先日、黒色無双を購入しました。
買った理由は2点で、
- 話題性があって面白そう
- 3Dプリンタで印刷した造形物に塗装してどうなるか確かめたかった
という感じです。
この記事では、まず黒色無双について説明し、次に実際の3Dプリントの出力に黒色無双を塗り、通常の黒絵の具との比較をします。
黒色無双単体の解説記事や動画は、現在でもそこそこ出回っているのですが、通常の黒絵の具との比較はざっと見た感じ無かったので、やってみることにしました。 実験は比較が大事だと思います。
黒色無双とは
KoPro社が開発した、究極の低反射率を誇る水彩アクリル絵の具です。(水彩アクリル絵の具=美術の授業とかで使う普通の絵の具、です)
光吸収率は、エアブラシによる塗りで99.3%、筆による塗りで98.7%と、他社の追随を許さないほど高いらしいです。 塗りは素人なので分からないのですが、エアブラシの方が倍近く反射を抑えられる模様。
↓の動画は、りんごの表面に黒色無双を塗って回転させたもの
エアブラシで対象物の表面に非常に大きな表面積の粉状塗膜層を作ることで、光を内部に閉じ込めて逃しません。その結果、水性塗料では類を見ない、超低反射の黒い外観を得ることができます。(黒色無双の公式ページより)
究極の低反射率を生み出した秘訣は、微細な構造にあるらしいです。
これは音で言うところの無響室の壁と似た原理なので、直感的に分かりやすいですね。
実際に塗ってみる
実際に塗ってみます。まずは黒色無双の中身から確認しましょう。
もう塗料の時点で、無という感想。肉眼で見てもほとんどこんな感じです。 ちゃんと塗料はマックスまで入っています。
今回はこの2つの3Dプリンタで印刷した単純な直方体に黒色無双を塗ります。 (黒い方は元々黒いやつで、まだ塗ってません)
塗った後はこんな感じになります。分かりやすいようフラッシュを焚いて撮影。
それぞれどの部分に塗ったかの詳細。
なぜか一部分だけ100均の絵の具のほうが暗くなっていますが、同じ部分を上から撮影すると、
ちゃんと黒色無双の方が暗くなっています。フラッシュのムラとか向きとか色々あるのかもしれない。
"V" は輝度値で、ペイントソフトのスポイトで取得した値を使っています。(輝度値が低いほうが暗い)
塗った感想をまとめるとこんな感じです。
- 黒色無双はマットな感じに仕上がる
- 塗り心地がよく、筆でもなめらかな仕上がりになる
- 反射の光沢がほぼない
- 3Dプリントで発生する凸凹がけっこう目立たなくなるので、3Dプリンタと相性がいい
今回は筆ですが、黒色無双はエアブラシで塗ると倍の吸光率を発揮するので、本当はもっとポテンシャルが高いはずです。
公式サイトによると、一応弱点もあり、構造上表面が削れやすいらしいです。
高級な塗料ですが、家に1つあると、ここぞという場面で表現力が上がるかもしれません。
余談
黒色無双が乾くまで、ブログの記事を書く時間が余ったので、黒色無双に関連する余談を2つ書きました。
(余談1) 黒体とベンタブラック
あらゆる電磁波(光)を一切反射しない理論上の物質のことを「黒体」といいます。
そして、MITが開発した「ベンタブラック (Vantablack)」は、吸収光率99.965% という限りなく黒体に近い物質です。
2019年になって、MITはベンタブラックより黒い、吸光率99.995%の物質を開発したらしいです…もはや意味がわからない。
どちらも、カーボンナノチューブの応用らしいです。
これらに関しては、あくまで "物質" なので、黒色無双の上位互換という存在ではないです。 黒色無双の特徴は "塗料" で簡単に塗れるという点なので、差別化できています。
(余談2) 塗料とステルス技術
戦闘機などのステルス性は、レーダーに捉えられないようにするため、いかに電磁波を反射しないか、という点に重きを置いています。
その中でも、塗装は1つの手段であり、黒色無双と似たものを感じたので、軽く触れたくなりました。 一応、黒色無双の遮断する領域は可視光がメインなので、基本的にステルス技術には使えないと思いますが。
軍事的にステルス性を高める塗料があるのでは、と思い調べたところ、Wikipedia(英)の「Radiation-absorbent material」のページに色々載っていました。
ステルス塗料に関する内容をまとめると、
- 米、中、イスラエルはステルス塗装技術を開発、実装している
- カーボンナノチューブを塗料に混ぜて、ステルス戦闘機の表面に塗る方法がある
らしいです。
以上