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Day-97 最強の金属

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「最強の金属元素は何か?」と尋ねられたら、何を想像するでしょうか。

最高の電気伝導率を持つ
 再利用性の高いアルミニウム
  機械的性能に優れたタングステン、
   宇宙で最も安定している

など…多角的な視点で捉えると、様々な候補が考えられます。

こと日本においては、おそらく最強の金属は、「マグネシウム」だと考えています。

マグネシウムが最強と考える理由

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戦闘機(のイメージ) by FranckinJapan

第二次世界大戦の敗因の一つは、戦闘機 (特に零戦) に必要な「ジュラルミン」のベースになるアルミニウムが日本国内で補えなかったことです (参考: *1 )。

日本ではアルミニウムの原料であるボーキサイトが産出せず、現在も海外からの輸入とリサイクルに頼っています。

一方で、マグネシウムは、莫大にある海水中に含まれており、島国の日本において自給することが可能です。

マグネシウムは「燃えやすい」「腐食しやすい」など、弱点が多く、弱点を克服するための合金開発が続けられていますが、それは弱点を補うほどのポテンシャルがあるからです。

「資源がほぼ無限」
 「比強度がアルミニウムより高い」(比強度: 重さに対する強度)
   など、他にも幾つかありますが、とにかくマグネシウムは素材として優秀です。

マグネシウムと仲良くなる

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前回の週レポで貼った画像

そういうわけで、今回はマグネシウムの気持ちを理解したいと思います。

マグネシウムに関する資料は、現在ネット上にあまり多くなく、自分で実験しないと分からないことが幾つもありました。 (マグネシウムリボンの情報は結構ありますが、ペレットとは形状が違うので、反応が変わってきます)

例えば、
「発火しやすいと言ってもどのくらいの熱で燃えるのか」
 「ガスバーナーの強火と、電気炉の熱では違いがあるのか」

とか、本当に知りたい部分は調べても不明瞭だったりします。 これに関しては、普段から調べているわけではないので、分野に対する検索スキルが低い可能性もありますが。

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るつぼに入ったマグネシウム

今回は数粒のペレットを使用します。 5粒しか入れていない理由は、もったいないというより、発火したときの総エネルギー量を減らし、もしものときに対応するためです。

熱した結果

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電気炉

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数分で内部温度はマグネシウムの融点を超える

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熱している最中の内部の閃光。これは電気炉の光ではなくマグネシウムが発火している炎

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融点を超えた後で中身を確認

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粉(酸化マグネシウム)になってしまった

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ガスバーナーでも似たような結果に

庭でやるのは普通にやめたほうがいいです。真似しないでください。 数分で終わる実験だったので応急処置として消火剤を用意した上で挑んでいますが…本当はもっと工場みたいな環境がほしいですね。 電気炉も安定した場所に置く必要があります。

わかったこと

普通に溶かすことができませんでした。これが分かっただけでもかなりデカいです。

  • マグネシウム自身が燃える、というイメージ
  • マグネシウムリボンよりはゆっくりと反応するが、基本的に同じ
  • マグネシウムの発火点が 570度なので、個体のまま燃えてしまう
  • 電気炉でもガスバーナーでもほぼ同じ

マグネシウムの燃焼に関しては、このような情報があります。

  • マグネシウムは酸素で燃えるが、二酸化炭素、水、窒素などでも燃焼することが可能
  • マグネシウムの燃焼を防止しつつ溶融させるためには、防燃ガスである六弗化硫黄  \ce{SF_6} が使用されがち *2

マグネシウムを溶かすためには、何らかの方法で融点を下げたり、発火を抑える必要があります。

例えば、融かした別の金属にマグネシウムを融かし、融点を下げる手段が考えられます。 その融かした合金を経由して目的の合金を作る、などのテクニックが決まれば面白いですね。

次やるときはマグネシウム-錫合金を作ってみようと思います。

反応式

どんな感じで反応するのか、というメモです。

空気中の酸素と反応する場合

水から酸素を奪い、水素を放出しつつ、水素が連鎖的に燃焼する場合の反応式

マグネシウムは水から酸素を奪って燃焼することができます。 特に、発火しているマグネシウムに水をかけると、消火どころか爆発事故になるので危ないです。
(ここ1-2週間、東京は毎日雨が降っており、牛歩を踏んでいたのはこれが原因)

燃焼エネルギーを計算すると、同質量のガソリンから4割落としたくらいのエネルギーを放出するようです。

  • ガソリン 1L (=0.78Kg) = 33.8MJ
  • マグネシウム 0.78Kg
    • 780[g] / 24.305 [分子量] = 32.09 [Mol]
    • 602[kJ] * 32.09[Mol] = 19.3[MJ] (ガソリンの約6割)

結構なエネルギーを持っているので、慎重に扱うべきですね。
ペレット状なら加熱しなければほとんど問題ないとは思いますが。

備考

ちなみに、Day-93 の週レポでも書いたのですが、マグネシウムは普通に Amazon に売っています。

www.amazon.co.jp

商品レビューを見ると、洗濯に使っている人が多いみたいです。
洗濯にも使ってみようかな…

*1:藤井非三四『「レアメタル」の太平洋戦争 なぜ日本は金属を戦力化できなかったのか』、 学研プラス、 2017/01

*2:https://www.tn-sanso.co.jp/jp/rd/giho/pdf/23/22.pdf

*3:マグネシウムの燃焼熱を参考。小数点以下は丸めた : https://ja.wikipedia.org/wiki/マグネシウム

*4:水素の燃焼熱を参考。小数点以下は丸めた : https://ja.wikipedia.org/wiki/燃焼熱